N.グレゴリー マンキュー
東洋経済新報社
2014-02-21
前回に引き続き、今回も同著で学んだ内容をご紹介します。
第五原理
交易(取引)はすべての人々をより豊かにする
貿易摩擦という言葉が示すように、交易を行うということは競争相手になりうることを意味しています。競争とは、いわば一方が勝ち、もう一方が負けることを意味しています。
にも関わらず、経済学では交易はすべての人々をより豊かにするといいます。
これは、なぜでしょうか。
交易のない世界では、人間はすべてのものを自給自足によって賄わなければなりません。しかし、交易を行うことによって、人間はそれぞれが得意分野に専門性を発揮し、より多くの財やサービスを利用することができるようになるのです。
ですから、交易を行う相手というのは、競争相手でありながら取引相手であるということを知っておく必要があります。孤立して暮らすより、交易して暮らすことの方が、はるかにメリットがあるのです。
第六原理
通常、市場は経済活動を組織する良策である
この原理は、一見すると意味がわからないかもしれませんが、市場経済における需要と供給のバランスのことを表しています。
需要すなわち買い手が欲しいと思うだけの財やサービスの量や価格は、供給すなわち売り手が提供しようと思うだけの財やサービスの量・価格とバランスがとれ、アダム・スミスのいう「見えざる手」によって導かれたように望ましい結果に到達するというものです。
価格による需要と供給のバランスが意図的に調整される場合よりも、市場経済によって価格が調整される場合の方が、社会全体の厚生を最大化する結果となるというのがポイントです。
これは、価格による需要と供給のバランスを中央集権的に支配しようとして失敗した数々の社会主義国の例を知れば、理解しやすいと思います。
第七原理
政府が市場のもたらす成果を改善できることもある
先に述べた市場経済における「見えざる手」の素晴らしさを知ると、ではなぜ政府が経済政策を打ち出すのかということが疑問になってきます。
これは、法や制度の面から理解できますが、市場経済にとって必要な法や制度の整備がなければ、市場経済は上手く働きません。
例えば、違法コピーが合法なら、誰もCDやDVDの販売を行わないでしょうし、そもそも音楽や映像作品を制作しなくなってしまいます。
もっと単純な事例でいえば、買い物客がカゴに入れた商品をそのまま持って出るようなことが許されたら、誰も商店を経営しようとはしないでしょう。
このような事例は、日常の常識になっていますが、政府による法整備があってはじめて守られている制度です。このようなルールが存在しているからこそ、市場経済は守られているわけですね。
それから、もうひとつ大事なことは、政府が意図的に市場経済に介入することにより調整されている事象が存在しているということです。
例えば、ガソリン税の導入や環境税の導入がその例です。
これらが設けられなければ、各企業は環境汚染も気にせずに、純粋に利益だけを求めて経済活動を推進することでしょう。市場経済は万能ではないので、このような問題に対しては政府が監視する必要があるのです。
以前の記事でも触れましたが、本書は経済学について非常にわかりやすく書かれた良書です。
中学校社会科の知識があれば、理解することができます。
しかし、そんな読みやすさでありながら、内容は非常に高度なもので、ハーバード大学やシカゴ大学でも使用されているという一冊です。
経済学をもう一度学びたい、まずは何か一冊読みたいという方にはオススメの一冊です。
最近は図解ものが人気ですが、このような専門書を一冊読むと、重みが違いますよ。